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模型という最後の製作 ― 建築の不在に抗う行為として

  • 岩川 幸揮
  • 2025年5月19日
  • 読了時間: 2分

第1章|模型という最後の製作

― 建築の不在に抗う行為として

──建築家は建物を「建てる」ことができない

建築家は建物を建てることができない。この一文に違和感を覚える人も多いだろう。だが、実際に建物を組み上げるのは、職人であり施工者であり、現場の人々である。建築家が手がけるのは「設計」であり、図面と模型、そして構想にすぎない。

建築家にとって最も物質的で、最後に自らの手でつくることができるのは模型である。模型は建物の縮小ではない。むしろ、建築家の行為が収斂する場であり、思考の凝縮体だ。

模型、図面、コンセプト――これらはすべて「建築を成立させるプロセス」の一部であり、同時に建築家の作家性が立ち現れる領域でもある。

建築家は建物を所有することはできない。建物は利用者に帰属するべきものであり、公共性のなかに開かれる存在だ。だが、模型は違う。模型は建築家の思考の痕跡であり、制作行為そのものである。

私は、建築模型を**「最後に残された製作」**として捉えている。それは縮尺の中に閉じ込められた夢ではない。言葉では語りきれない構造や関係性、あるいはまだ名付けられていない建築的感覚を、模型というかたちで物質化する試みだ。

建築とは、完成された建物ではない。建築とは、建てられることのない模型を通してなお問われ続ける実践の名なのだ。

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