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第三章|波紋のレイヤー:過去・現在・未来の干渉場

  • 岩川 幸揮
  • 6月20日
  • 読了時間: 2分


波は単独で存在しない。ひとつの波は、他の波と出会い、干渉し、重なり、あるいは消し合う。この干渉が生まれる場こそが、私たちが「空間」や「時間」と呼んでいるものの実体である。

ここで注目すべきは、波は常に「複数の時間軸」にまたがって存在しているという事実だ。

1. 波の干渉とは何か?

建築において、ひとつの建物が成立する過程では、過去の思想(例:モダニズム)、現在の技術、未来の利用可能性など、複数の“時間的要素”が同時に作用している。これらは単なる時間の積み重ねではなく、**空間内で可視化される“レイヤー化された波紋”**に等しい。

たとえば磯崎新の建築では、戦後日本という歴史の波と、未来への模索という別の波が干渉していた。ある建築が「前衛的」や「過去的」と評されるのは、それがどの時間軸の波と強く干渉しているかによるのだ。

2. 観測の位置=空間の位相

波紋の干渉を捉えるには、どこに立つか(=どの位相に身を置くか)が決定的に重要である。たとえば、チャート上で垂直線に沿った「一瞬」を切り取ることは、波の**最大干渉点(テンション)**を観測する行為である。

ここで浮かび上がる概念が、**波紋は“観測者によって形を変える”**というものだ。

建築でも同様に、空間の意味は使われ方・見る角度・時間帯によって変動する。つまり、空間は“ある”のではなく、“観測される”ときに“立ち上がる”。

3. 重なる波の「価値」

波紋が重なる地点には、時間と空間が凝縮された価値のピークが生まれる。それは、価格が一気に跳ねるチャート上のブレイクアウトでもあり、来場者が建築空間に一歩踏み入れたときに感じる“なんともいえない緊張”でもある。

波は単なる上昇や下降ではなく、価値を呼び起こすための衝突の場であり、その交差点こそが、建築的・芸術的な「奇跡の瞬間」となる。

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