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第一章|波は過去ではなく未来を語る

  • 岩川 幸揮
  • 6月18日
  • 読了時間: 2分

私たちはしばしば「波紋が広がっている」と口にする。何か出来事が起きたとき、その影響がじわじわと拡散していく様子を、あたかも池に落ちた一滴の水が波となるように捉える。この比喩は美しい。しかしこの「広がり」は、あくまで視覚的な印象に過ぎない。

建築、芸術、そしてチャート分析の文脈において重要なのは、波紋はすでに広がりきっているという立場だ。震源地で衝撃が起きた瞬間、波紋は空間全体に影響を与えはじめ、もはや「今ここ」で観測される波は、その衝撃の“未来にある現れ”に他ならない。つまり、「過去の衝撃が、未来の形を先に決めている」。

この視点の転換こそが、未来の波紋理論の起点である。

チャート理論では、価格がどのように動くかを予測しようとする。しかし、実際に観測される価格変動のパターンは、「これから起こる未来の波」が既に形を成し始めていると捉えることで、まったく違った相貌を見せてくる。

例えば建築で言えば、設計とは“未来に立ち現れる空間の波紋”を読む行為だ。まだ存在しない空間の気配、まだ到達していない使用者の動線、まだ見ぬ風の流れ、光の挙動。そのすべてが、設計者の頭の中で既に“起こっている”。完成された建築とは、その波のピークである。

波は「これからやってくる」のではない。波は「すでに現れている」のだ。問題は、私たちの知覚や理解が、その波の最前線を“どれだけ鮮明に読み取れるか”にある。

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