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建築の発現

  • 岩川 幸揮
  • 5月22日
  • 読了時間: 1分

第4章|建築家はパフォーマーである

― 振る舞いとしての建築、演出としての構築

── 建築は、建てられる前にすでに演じられている。

建築家は建物を建てない。では、建築家は何をしているのか?その問いに対するひとつの答えは、「演じている」ではないだろうか。

模型をつくること。図面を描くこと。言葉を発すること。空間を指し示すこと。建築家は、構造物を構築するのではなく、構造を演出する存在である。その行為は、職人や施工者による物理的な構築とは異なり、むしろ時間的・概念的な振る舞いの提示に近い。

建築家は舞台の演出家であり、同時に出演者でもある。彼/彼女らは、建築の時間軸の上に自らを位置づけ、語り、構え、沈黙し、時に逸脱する。設計とは、プロジェクトの始まりであると同時に、ひとつのパフォーマンスでもある。

描かれた線。選ばれた素材。提出された模型。投げかけられたコンセプト。それらはすべて、建築が建てられる以前に、すでに発現している建築行為だ。

建築とは、構築された物体ではない。建築とは、演じられ、繰り返され、脱構築される時間の連なりである。

建築家は、言葉の演者であり、図面の舞台装置であり、模型という小さな劇場の主役なのだ。

 
 
 

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