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止まっていても、価値は動く──ヤマハとホンダ、二つの空間

  • 岩川 幸揮
  • 2025年12月19日
  • 読了時間: 4分

空間としてのチャート、運動としての価値

この文章は、ヤマハとホンダという二つの企業を比較し、どちらが優れているかを判断するためのものではない。そもそも、この二社を並べた理由は単純だ。チャート構造が似ていた。ただそれだけである。

一つ、気になる企業を見つけたとき、その企業だけを凝視するのではなく、構造の似たチャートを探す。それによって初めて、その空間が持つ癖や強度が浮かび上がる。

選択肢が無限にあると、人は判断を恐れる。だが、二つ、三つの空間を並べたとき、問いは一気にシンプルになる。上がるか下がるかではない。どの空間が、より魅力的に映るかだ。



底値は恐怖ではなく、地盤である

底値という言葉には、下落や不安のイメージがつきまとう。しかしここで扱う底値は、そうした感情とは別の次元にある。

ホンダの底値には、滞留がある。水色の丸で示した領域は、価格が止まった場所というより、人々の判断が長く留まり続けた空間だ。

そこは踊り場のような場所でもある。進むことも、戻ることもできる。だからこそ、人は立ち止まり、考え、迷う。

一方で、ヤマハの底値は、階段のように積み上がっていく。同じ水色の丸でも、その内部で起きている運動は異なる。滞留ではなく、段差。時間をかけながら、少しずつ位置を上げていく構造だ。

ここで見えてくるのは、その空間がフラットなのか、あるいは階層を持っているのか、という違いである。

底値とは終点ではない。それは、次の空間を成立させるための基盤だ。


記号は感情ではなく、構造を示す

チャートに描かれた丸や矢印、四角、白い「」は、印象を強めるための装飾ではない。それぞれが、空間の役割を示している。

水色の丸は、その空間における運動の質を示す。ホンダでは踊り場、ヤマハでは階段。同じ色でも、意味は一致しない。

緑の丸は、その空間における一つの見せ場だ。建築で言えば、ファサードと呼ばれるかもしれない。だが、ここが終点ではない。ファサードは一面だけとは限らず、複数の視線を許容することもある。

紫の四角は、空間が一度、明確に区切られた地点だ。次の展開に向けて、判断が集約される場所でもある。

白い「」は、長く意識され続けたレンジ。大まかな空間構成そのものだ。ここをブレイクスルーする動きは、単なる企業の変化ではなく、時代の感触が変わる兆しを含んでいる。

水色の丸に立ち、振り返る

水色の丸は、外から眺めるための記号ではない。そこは、人が立っている場所だ。

その地点に身を置き、一度、歩みを止めて振り返る。

ホンダの水色の丸の空間から振り返ると、すぐ背後に高層ビル群が立ち上がっているように感じられる。情報は近く、密度は高く、視界はそこで遮られる。

一方、ヤマハの水色の丸の空間に立つと、高層ビル群は確かに存在する。だが、その向こう側に、うっすらとした遠景が残っている。

それは未来ではない。ただ、遮られていない距離があるという感覚だ。

どちらが正しいわけでもない。ただ、その空間に立ったとき、どの景色を自分の視野として引き受けたいか。それが問われている。


多重経路散乱場としてのチャート

この二次元のチャートは、本来、三次元化されるべきものだ。

価格と時間だけでは、その空間の全ては語れない。そこには、人が立つ足場があり、そこから見える視野がある。

同じ場所にいても、社会の空気感が変われば、見えるものは変わる。時間の流れの質量も異なる。

都市の人口濃度が、交通機関を通して濃くなったり薄くなったりするように、価値もまた、移動し、散乱し、重なり合う。

価値とは、金額でも、人口でもない。それは一種の権威性であり、作家性のようなものだ。


ブレイクスルーは社会の兆しである

ブレイクスルーとは、企業の躍進ではない。

それは、社会の側が変化する瞬間だ。人のリテラシーが、一段、更新されるとき。

AIの発達。首相交代。テクノロジーの新陳代謝。社会情勢の大きな変化。

それらは事件ではなく、世界の読み方が変わる合図だ。

そのとき、人は投資に興味を持つ。儲けたいからではない。関わらずにはいられないと、身体が理解してしまうからだ。


そして、身体の選択へ

都市の間をすり抜けるとき、建物も、人も、残像のように過ぎていく。

そのとき、私は何を思うのか。

たとえバイクが信号で止まっていたとしても、価値は動き続けている。時間は滞留せず、空間の意味だけが書き換えられていく。

だからこそ、その瞬間に見える景色は、変化に富んだものであってほしい。

どちらが上がるかではない。どこに立ち、どの視界を引き受けて走るか。

今、私はその感触として、ヤマハのバイクに乗っている。

それは支持でも、予測でもない。ただ、価値が動き続ける世界に、身体を置くための選択だ。


 
 
 

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