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第四回:「COWBY ─ 跳躍する建築のプロトタイプ」

  • 岩川 幸揮
  • 6月15日
  • 読了時間: 2分
PHARMAKON OVERWRITE STUDIO 構想記 #04
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COWBYは、建築の身体化であり、建築の流動性を体現する存在だ。ジャンプするのは彼の身体だけではない。重力に囚われた建築そのものが、一瞬、宙に浮く。

その名は、**COW(牛)WALLABY(ワラビー)**から来ている。ずっしりと重く、都市に定着する「牛」と、バネのように軽やかに跳ねる「ワラビー」。定着と跳躍、重量と軽快さ、構造と運動。相反するものをひとつの身体に融合させた存在がCOWBYだ。

COWBYの両腰には、左右対称にポケットがひとつずつ備えられている。このポケットは単なる収納ではない。それぞれが、移動可能なマイクロ建築のユニットであり、空間を内包し、構造を展開するための圧縮装置だ。道具を、記憶を、あるいは建築そのものを持ち運ぶために存在する。

COWBYの身体を覆う牛模様は、装飾的でありながら建築的である。ここではマテリアル自体は変更されていない。木やコンクリートや鉄のような物質ではなく、あくまで模様としての牛が転写されている。それは、素材の本質に踏み込まずに、視覚だけで建築を再構成する行為なのだ。表面が、構造に語りかける。そこにあるのは、柄というコード化された建築の兆候である。

このキャラクターは、ある意味で建築の脱臼を体現している。動かないはずの建築が動き、ジャンプする。その瞬間、私たちが信じてきた「建築」の定義が揺らぐ。定着ではなく、運動としての建築。定義ではなく、問いとしての建築

COWPYRIGHTが「複製」と「記憶」を通して建築の原型を反復する装置だとすれば、COWBYは「跳躍」と「変形」によって、建築の未来を撹乱する存在である。建築が、まだ知らないかたちとふるまいを見せるためのプロトタイプ。その身体に空間を蓄え、そのジャンプに建築を託す。

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