top of page

永遠建築

  • 岩川 幸揮
  • 5月25日
  • 読了時間: 1分

終章|建築の不在から始める建築


― 存在しないものとしての建築、あるいはその未来

──建てられない建築は、建築でないのか?

ここまで、模型、言語、チャート、波、そして都市の不在について語ってきた。そのすべてに共通する問いがある。それは、「建築とは建物のことなのか?」という根源的な問いだ。

私は、建築を「建物」とは別の次元で捉え直したいと思う。建てられることがなければ、建築ではないのか。存在しなければ、理論は無効なのか。だが、それに抗うかのように、模型は静かに物質として存在している。チャートは波動として構造を立ち上げている。言葉はタグとして建築を跳ねさせている。

建築は、不在のなかから生まれる。それは、失われた都市、壊れた建物、語りえぬ関係性、あるいはまだ記述されていない空間に対して差し出される応答である。

現代において、建築は物理的なマスとしての存在よりも、情報、視線、経済、関係性の中で変異し続ける構造体として立ち上がる。それはときに図面に、ときにチャートに、ときに模型に、そしてあなたの身体や記憶の中に現れる。

建築とは、まだ建てられていない何かである。そしてその「まだ」は永遠に続く可能性を持つ。建築の不在とは、終わりではなく、始まりの場所なのだ。

最新記事

すべて表示
第三章|波紋のレイヤー:過去・現在・未来の干渉場

波は単独で存在しない。ひとつの波は、他の波と出会い、干渉し、重なり、あるいは消し合う。この干渉が生まれる場こそが、私たちが「空間」や「時間」と呼んでいるものの実体である。 ここで注目すべきは、 波は常に「複数の時間軸」にまたがって存在している という事実だ。 1....

 
 
 
第二章|震源地と波紋:時間的因果の非対称性

「波紋が広がる」という直感は、時間の線形的な理解に基づいている。衝撃(震源地)がまず発生し、それが徐々に空間へと伝播していく。しかし、 波の構造は非線形的であり、因果関係もまた一方向とは限らない 。 ここで問うべきは、「震源地は本当に“始まり”なのか?」ということだ。...

 
 
 
第一章|波は過去ではなく未来を語る

私たちはしばしば「波紋が広がっている」と口にする。何か出来事が起きたとき、その影響がじわじわと拡散していく様子を、あたかも池に落ちた一滴の水が波となるように捉える。この比喩は美しい。しかしこの「広がり」は、あくまで視覚的な印象に過ぎない。...

 
 
 

コメント


ロゴ-1.png
bottom of page