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評価時場

  • 岩川 幸揮
  • 5月23日
  • 読了時間: 1分

第5章|価値と資本の境界に立つ建築


― 評価されるものと交換されるもののあいだで

── 建築は、価値の外に咲く。

建築は、つねに価値にさらされている。経済的価値、美学的価値、社会的価値。どれもが建築を測ろうとする。

しかし、建築が本来立脚しているのは、こうした価値の尺度ではなく、交換されないもののための構築ではないか。

土地の価格。施工コスト。資本回収の期間。これらは建築を不動産に変換するための言語であり、建築そのものが語るべき言葉ではない。

建築とは、資本のコードの中に組み込まれながらも、それをかすかに逸脱しようとする構造のことだ。それは、評価されるために存在するのではなく、むしろ、評価の外部に耐え続ける姿勢のことである。

アートがそうであるように、建築もまた、価格に還元されない「何か」によって存在している。それは空間の手触りかもしれないし、時間の層かもしれない。あるいは、使われ方を規定しない曖昧な余白かもしれない。

資本と隣接しながらも、決してその内部にはとどまらない。建築は、価値と資本の境界に立つ思想の遺構なのだ。

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