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模型という言葉以前の建築

  • 岩川 幸揮
  • 5月20日
  • 読了時間: 2分

第2章|言葉の代替装置としての模型

― タグ化する建築、語りえぬ構造の提示

──模型は、語るのではなく、指し示す。

建築家は言葉によって建築を語ることに慣れている。だが、言葉では届かないものがある。むしろ、模型は建築を語るための代替装置として機能するのではないか。

建築が紙の上の図面にとどまらず、時にキャンバスに描かれ、タグとしてぶら下がり、装身具として身につけられるとき、そこには「建物ではない建築」が立ち上がっている。

SCRAP AND BUILDOVERWRITEPHARMAKON

──こうした言葉たちは建築を記述するのではなく、建築をタグ化する。タグとは分類ではなく、跳躍のための記号であり、読むのではなく跳ねるためのものだ。

模型はそうしたタグの物質化であり、また言語に還元されない構造を孕んだものだ。言葉は概念を指すが、模型は関係性そのものを立ち上げる。それは非言語的な建築理論の現場であり、建築が理論に変容する直前の物質的振動である。

模型という形式を通して、建築は語られる以前の状態として提示される。それは未定義の状態にとどまりながらも、鋭く空間を切り裂く視点を提供する。

建築とは、建物になる前にすでに構築されている。そしてそれは、模型という沈黙の中で、もっとも雄弁に語られている。

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