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終章|ポスト比例時代の建築へ:波としての構築

  • 岩川 幸揮
  • 2025年6月2日
  • 読了時間: 2分

比例という概念は、長らく建築を支えてきた普遍的原理とされてきた。だがその幻想は、モデュロールの波動的性格を再読し、チャート空間論へと展開する中で、もはや絶対的な秩序ではなく、むしろ揺らぎを内包する仮構であることが明らかになった。比例は「永遠性」をもたらす代替不可能な原理ではない。むしろ建築そのものが、常に流動する空間の一位相にすぎなかったのではないか。

ここで私たちは、「波としての構築」という考え方に到達する。建築はもはや物質としての完結性ではなく、観測と変化に晒された干渉場の生成である。そこでは空間の強度も形式も、単体としてではなく、他の波(他者、時間、身体、歴史、経済)との重なりとズレの中で決定される。

こうした視座から見れば、建築とは「建てる」ことによって何かを固定する行為ではなく、「響かせる」ことによって空間を生成する行為となる。材料や構造体は一種の媒質であり、その振動がどのように伝播し、干渉し、観測されるかが建築の質を決める。だから建築は、もはや永続性ではなく、連続的変化のリズムを持つ。

この新たな建築観は、アートとも共振する。特に現代アートが持つ「不可視の空間性」「揺らぎの形式性」と、チャートに見られる波動構造のダイナミクスが、建築の未来に重要なヒントを与えてくれるだろう。アート、チャート、建築、理論。それぞれが異なる波長を持ちながら、共鳴の場を持ちうるとき、建築は比例という幻想の彼方に新たな秩序を発見できるはずである。

ポスト比例時代における建築とは、物質の配置ではなく、波の交差であり、干渉の振幅であり、リズムの創出である。そこでは秩序も、中心も、あらかじめ与えられることはない。ただ波として構築される空間が、私たちの身体や時間とどのように「出会う」のか。その一瞬一瞬の交点にこそ、建築の核心が現れる。

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